食品安全情報blog過去記事

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論文

  • 非セリアック病グルテン過敏症疑いは二重盲検プラセボ対照試験では僅かしか確認されない

Suspected Nonceliac Gluten Sensitivity Confirmed in Few Patients After Gluten Challenge in Double-Blind, Placebo-Controlled Trials
Javier Molina-Infante and Antonio Carroccio
Clinical Gastroenterology and Hepatology 2017;15:339–348
http://www.cghjournal.org/article/S1542-3565(16)30547-X/pdf
非セリアック病グルテン過敏症(NCGS)の確定診断には二重盲検プラセボ対照グルテン負荷試験が提案されている。1312人の成人からなる10の二重盲検プラセボ対照試験のデータを解析したところ、231人のNCGS患者のうち38人(16%)しかグルテン特異的症状は示さなかった。さらにこの40%がノセボ反応を示した。これらの知見はNCGS患者とされる人たちの多くにとってグルテンが原因ということに疑問を提示し、この種の研究におけるノセボ効果の重要性を強調する。

  • この小さな分子が地球の食糧安全保証に大きな未来を持つかも

This small molecule could have a big future in global food security
10-Mar-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-03/uoa-tsm030317.php
アリゾナ大学の研究者らが真菌がアフラトキシンを作るのを妨げる小さなRNA分子を作るトランスジェニックトウモロコシを開発した。Science Advancesに発表。この遺伝子組換えトウモロコシはカビを感染させても毒素の量が検出限界以下である。宿主誘発性遺伝子サイレンシングHost-Induced Gene Silencingという技術でAspergillusが毒素を産生するのに必要な酵素の発現を抑制する。

  • オーガニックは持続可能な食糧の未来のためのレシピの一成分に過ぎない

Organic is only one ingredient in recipe for sustainable food future
10-Mar-2017
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2017-03/uobc-oio030617.php
多くの人がオーガニックを選ぶことがヒトや地球により良いと考えているが、ブリティッシュコロンビア大学のScience Advancesに発表された研究によると必ずしもそうではない。
「現在の環境問題や食糧危機の解決法としてしばしばオーガニックが聖杯として提案されるが、そのコストとベネフィットは文脈によって大きく異なる」と資源、環境、持続可能性研究所(IRES)のVerena Seufertは言う。この研究で彼女と共同研究者の地球環境変化と食糧安全保証のカナダ研究部長であるNavin Ramankuttyは収量、気候変動への影響、農家の生計、消費者の健康などの17の基準で有機農業を解析した。
(概要リンク)
多くの消費者にとって真っ先に気になる二つのこと、合成農薬の使用と栄養については、カナダのような農薬規制が厳しく食生活が豊かな国ではオーガニックを選ぶ健康上のメリットはほとんどない。しかし農薬が注深く規制されていない国ではメリットはカナダより大きいだろうと考える。
持続可能性にとって重要な指標は収量で、これまで多くのオーガニックと慣行栽培を比較した研究が収量を考慮していない。有機作物の収量は慣行栽培より19-25%少なく、有機農業の環境上のメリットは収量の低さを考慮すると消失する。「有機農業は生物多様性にとってより良いかもしれないが、同じ量の食物を得るのにより多くの土地を必要とする。そして農業用地にすることが住居の損失と気候変動に最も大きな寄与をする」とSeufertは言う。
(ものすごい今さら感があるのだけれど、カナダの環境系の学者が言うことに意味があるのかなぁ)