食品安全情報blog過去記事

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缶詰のマグロに多量の亜鉛が存在するというメディアの報道は誤データに基づいている

Media reports about high levels of zinc in tinned tuna are based on flawed data
April 13 2018
https://www.nhs.uk/news/food-and-diet/media-reports-about-high-levels-zinc-tinned-tuna-are-based-flawed-data/
「缶詰のマグロは安全な量の最大100倍の亜鉛を含み、胃を壊す」英国の日刊紙The Sunは報じている。この報告は、ある種の食品容器の内張りに検出される亜鉛が内容物にどのくらい漏出するか、そして消化に問題を引き起こすかどうかを調べた研究室での試験に基づいている。
しかし、研究者の計算には間違いがあったようであり、実際の亜鉛の量は、ガイドラインの推奨値内に良く収まっていたということである。
これらの研究者は、缶詰のマグロ、アスパラガス、鶏肉およびスイートコーンから試料を取り、亜鉛の量を測定し、マグロやアスパラガスの典型的な部分を含む食事中の亜鉛が996 mgになると算出した。そして、ヒトの小腸由来の細胞を、その用量の亜鉛に暴露した。
しかし我々がその食事について計算したところ、亜鉛含量は996 mgではなく、2.1 mgであった。推奨一日許容量は、男性では9.5 mg、女性では7 mgであるため、制限値以内に収まっていることになる。
小腸の細胞を996 mgの亜鉛に暴露することにより、細胞機能の低下が認められたが、これは2.1 mgで暴露した場合に起こることを正確に表しているとは言えない。
亜鉛は、細胞新生や傷の治癒など、体内の多くの機能を助ける必須ミネラルである。高用量を摂取すると体が吸収できる銅の量が低下し、その場合、貧血や骨の脆弱化が引き起こされることがある。