食品安全情報blog過去記事

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根拠の重みと不確実性についての覚え書き−改訂2018

EU SCHEER(健康環境新興リスクに関する科学委員会)
Memorandum on weight of evidence and uncertainties - Revision 2018
Adopted via written procedure on 26 June 2018
https://ec.europa.eu/health/scientific_committees/scheer/opinions_en#fragment2
この覚え書きは人及び/又は環境が暴露される可能性のあるストレッサーのリスク評価を行う際に、根拠の重み付けアプローチ(WoE)をどうやって使うかに焦点をあてたものである。新規及び再興健康リスクに関する科学委員会(SCENIHR)の新興問題の同定に関する報告書と将来のリスク評価の課題に関する作業を補完するためのものである。この文書の目的は、SCHEERのリスク評価においては、適切であればWoEを使うことを支援することである。さらにリスク評価を行っている異なるEU機関の仕事の一貫性に役立つ。
科学的根拠は、科学的仮説あるいは理論を支持・否定・変更するのに役立つ観察、実験、モデルの結果および専門家の判断(expert judgements)からなる。SCHEERにとって関連情報やデータの検索は、問われている特定の質問に答えるため及び/又はリスク評価を行うための情報源の同定・収集・選択からなる。対応すべき問題によってはSCHEERは、依頼者のDGあるいは第三者(例えば関係者の報告、申請者や企業が提供した非公開データなどの申請書)が提供したデータ、他の科学あるいは政府や国際機関の報告や意見、学術論文(ピアレビューされたもの)、メタ解析や系統的レビュー、個人的情報を使うこともある。
WoEは以下を含む反復プロセスである:
−問題の設計
−根拠となる可能性のあるもののの同定、収集、選択
−それぞれの一連の根拠の評価と重み付け
−一連の根拠の統合
−不確実性の記述
−結論と報告
それぞれの一連の根拠について、適用可能性、信頼性、妥当性の判断基準をあてはめて全体的な質を評価する必要がある。不確実性の解析と記述のためのいくつかのツールを提示した。異なるラインの根拠を統合する際には、全体としての根拠の強さは、結果の一貫性と質に依存する。全体の根拠の重みについては標準的フォーマットで提示されるべきである。ヒトや環境リスクの解析結果の分類には以下の用語からなるシステムを提案する:
−強い根拠Strong weight of evidence:一次的一連の根拠primary line of evidence(ヒト、動物、環境)とそのほかにひとつ以上の一連の根拠(特に作用機序/メカニズム研究)が一貫していて、他に矛盾する根拠がない(重要なimportantデータギャップがない)
−中程度の根拠Moderate weight of evidence: 良い一次的一連の根拠があるが他の系統からの根拠がない(重要なデータギャップ)
−弱い根拠Weak weight of evidence:一時的根拠が弱い(激しいsevereデータギャップ)
−根拠不明Uncertain weight of evidence:異なる系統の根拠が矛盾していて:科学的に説明できない
−根拠の重み付け不可能Weighing of evidence not possible:適切な根拠がない

用語
Line of evidence一連の根拠、根拠群:同じようなタイプの根拠一式
Quality 質:適用可能性、信頼性、妥当性relevance, reliability, validityを組み合わせて判断
Reliability 信頼性:標準化、方法や実験技術、結果の記述などで判断される個々の報告の質
Validity妥当性:データを作るのに使った方法の評価がOECD妥当性評価基本原則のような妥当性評価原則に従っている
Relevance適用可能性:そのデータは特定のハザード同定やリスクキャラクタリゼーションのために適切かどうか

ヒト研究に関しては
QUOROM 声明Improving the quality of reports of meta-analyses of randomised controlled trials
PRISMA:Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses
CONSORT 声明
STROBE声明(疫学)
が質の評価に使える