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ポリアミドオリゴマー類: 台所用品由来のプラスチック成分

Polyamide oligomers: plastic components from kitchenware
BfR Opinion No. 014/2018 of 30 May 2018
https://www.bfr.bund.de/cm/349/polyamide-oligomers-plastic-components-from-kitchenware.pdf
ポリアミド(PA)製台所用品は、焼く、炒めるなどの調理において広く使用されている。だが、この種のプラスチックの特定の成分は、台所用品から食品に移行することがあり、そのため健康問題を引き起こす可能性がある。これはドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)が行った評価に基づく知見である。
BfRは、PA6型やPA66型のポリアミドから食品へ移行する環状オリゴマーによる健康リスクを評価した。PAオリゴマーは、カプロクタム(PA6由来)やアジピン酸/ヘキサメチレンジアミン(PA 66y来)などの分子がいくつか集まって作られた化合物である。この種のオリゴマーはプラスチックの硬化(重合)中に非意図的に生じる。分子が小さいため、プラスチックから放散して食品に移行することがある。
PAオリゴマー類に関する毒性試験データがないので、BfRの科学者はTTC概念を用いた。TTCは「毒性学的懸念の閾値(threshold of toxicological concern)」の略語である。この手法では、毒性学的情報が得られていない化学物質を、化学構造に基づいてCramerクラス(I〜III)に分類する。それぞれのクラスに対し、それより少なければ、属している化学物質が健康リスクを生じそうもないと考えられる最大一日摂取量が割り当てられている。この手法は、健康リスクに関する十分な情報が既にある化学物質の包括的データを活用することで成り立つ。
PAオリゴマーに発がん性の疑いは無い。そのため、TTC概念によると、環状PAオリゴマー類のそれぞれにおいて、一日当たり90 µg (0.09 mg)までの摂取では、健康リスクが生じる可能性は低い。だが、食品監視機関とBfRが行った研究から、環状PAオリゴマー類は、台所用品から食品に高濃度で移行する可能性が高いことが示された。
BfRは、毒性試験の十分な情報が入手できるようになるまで最終的なリスク評価はできないと結論付けた。そのため、製造者に対し、欧州食品安全機関(EFSA)の規約に沿った毒性データを収集し、それらをBfRに提出するよう呼び掛けている。