食品安全情報blog過去記事

はてなダイアリーにあった食品安全情報blogを移行したものです

オーガニックについてのレビュー発表

Organic review published
Wednesday 29 July 2009
http://www.food.gov.uk/news/newsarchive/2009/jul/organic
FSAの委託した独立したレビューの結果、オーガニック食品と通常食品の間には栄養素の含量や何らかの健康影響について大きな違いはないことが示された。
このレビューは特に栄養価について集中的に評価した。
FSAの消費者の選択と健康的な食生活部門の長であるGill Fineは、「人々が正確な情報を得ることを確保することが、我々が食べる食品を情報を与えられた上で選択するを可能にするには必須である。この研究は人々がオーガニック食品を食べるべきではないことを意味するわけではない。この研究が示しているのは、オーガニック食品と通常の食品に、仮に僅かな栄養価の違いがあるとし
ても、オーガニック食品を食べることによる健康上のメリットがあるという証拠はない、ということである。」と述べている。
「FSAは消費者の選択を支持し、オーガニック食品に対して賛成でも反対でもない。人々がオーガニック食品を選ぶ理由は動物の福祉や環境への懸念など様々であろう。FSAは消費者に最良の科学に基づく正しい情報を提供し続ける。」
この研究はLondon School of Hygiene and Tropical Medicine(LSHTM:公衆衛生専門の大学院)が行った系統的レビューである。Alan Dangour博士らが過去50年間に発表されたオーガニックと通常食品の栄養含量や健康影響についての全ての論文をレビューした。このレビューはこの分野でこれまで行われた研究の中では最も包括的なものである。
FSAは最も最新の科学に基づく正確な情報を消費者に提供するための任務の一環としてこの研究を委託した。
この研究は二部構成で、一つは栄養素の差とその意味について検討し、もう一つはオーガニック食品を食べることによる健康影響について検討した。結果を報告した論文はAmerican Journal of Clinical Nutritionが発表した。
この論文の筆頭著者でLSHTMの栄養と公衆衛生介入研究ユニットのDangour博士は以下のように述べている。「オーガニック作物や家畜と通常生産されたものの間には僅かな栄養素の含量の差があるが、それらは公衆衛生上意味がない。我々のレビューは栄養価が優れているという理由でオーガニック食品を選ぶことには根拠がないということを示す。」
一つ目のレビュー(1MB)
Comparison of composition (nutrients and other substances) of organically and conventionally produced foodstuffs: a systematic review of the available literature
http://www.food.gov.uk/multimedia/pdfs/organicreviewappendices.pdf

二つ目のレビュー(333KB)
Comparison of putative health effects of organically and conventionally produced foodstuffs: a systematic review
http://www.food.gov.uk/multimedia/pdfs/organicreviewreport.pdf


EurekAlertのプレスリリース
オーガニック食品は通常食品より栄養的に良いわけではない
Organic food not nutritionally better than conventionally-produced food
29-Jul-2009
http://www.eurekalert.org/pub_releases/2009-07/lsoh-of072909.php
消費者は健康や栄養上のメリットを期待して高価なオーガニック食品を選んでいるように見える。世界の有機食品市場は2007年は290億ポンドと推定され、英国だけで20億ポンドになる。これまでオーガニックの方が栄養価が優れていると結論した報告もあるがそれらは系統的ではない。
Alan D Dangour et al.
Nutritional quality of organic foods: a systematic review
Am J Clin Nutr (July 29, 2009). doi:10.3945/ajcn.2009.28041
http://www.ajcn.org/cgi/content/abstract/ajcn.2009.28041v1


(目新しい発見があるわけではない。FSAがこれまでもずっと言ってきたことと同じ。健康のためとか安全のために有機、というのは根拠がない思いこみ。というか騙されてるんじゃない?という話。
日本のYahooニュースについていたコメントがあまりにもひどいので解説

有機農産物には残留農薬が少ないから健康への悪影響が少ないという主張は残留農薬モニタリング結果によって既に何度も何度も否定されている
有機農産物からも残留農薬は検出される。頻度は多少通常農薬より少ない。しかし基準違反という尺度を用いれば圧倒的に有機農産物の基準違反の方が多い。有機では認められていないはずの農薬がしばしば検出されるから。健康影響に関してはどっちもほぼ影響なし。
ただし英国やヨーロッパの話。日本で怪しげな「資材」を使って「無農薬」と称している人たちの作るものについてはデータがないのでなんとも言えない。
うちの研究所に電話してきた人は農薬として認可されているもの以外を使えば「無農薬」だと主張していた。その人が害虫を殺すために使っていたのは毒性の強いストリキニーネ。使わないでくれと言っても無農薬ではそれが常識みたいなこと言ってた。
少なくとも有機JASですらない「無農薬」と勝手に主張しているモノについては信頼できない。

●通常農産物が有機より有害ではないと言われて有機推進団体が持ち出してきたのが栄養価が高いとか健康に良いとかいう主張。Soil Associationなどがここ数年それを宣伝文句にしてきた。
参照:
http://www.soilassociation.org/Whyorganic/Whatisorganic/Fivereasonstochooseorganic/tabid/334/Default.aspx
今回の報告書はそれを否定している。

●環境影響は食品の安全性とは違う問題なのでFSAは議論していない。
ただし有機農産物のほうが単位面積あたりの収穫量が少ないのは厳然たる事実。ジャガイモで収量半分というデータがある。原野を保護するのが環境保護なら耕作地を増やすのは当然環境負荷が高いということになる。

●英国におけるオーガニック食品のメリットの最後の砦は動物愛護とGM反対。
しかしながらオーガニックチキンやビーフや牛乳よりベジタリアンのほうが理論上は圧倒的に分がいい。
GM反対は宗教のようなものだから、例え栄養に優れ農薬使用量が少なく単位面積あたりの収量が多くて環境負荷が少なくても反対するのだろう。

英語圏では結構大きなニュースになっている
http://news.google.co.jp/news/more?pz=1&topic=m&ncl=djeR6Vbj_SdoGFMnOAKBLQM9afXzM